つれづれ

徒然:メンテナンスフリーと複写機ビジネス

1枚コピーすると10円チャージするのが複写機のビジネスモデルでしょう?

多分、それでまちがっていないのですが、誤解があると思います。ある複写機会社の常務に「私たちの財産はカスタマーエンジニアですからね」と言われた日のことを思い出します。

今さら言うまでもありませんが、元々、手書きだったものを一瞬にして再生できるのが複写機(MF機)のバリューでした。印刷や写真との大きな違いは再生(コピー)のスピードにありました。もうひとつの特徴は、誰がやっても同じものが再生されることでした。これは模写や手書きとは大違いでした。官公庁が真っ先に複写機に飛びついたのは、理解できます。

他方、同じテクノロジーを使ったプリンタはコンピュータに蓄えた文書や画像などの情報を紙の上に再生します。複写機にとても似ているのですが、だいぶ違います。実際、プリンタのビジネスモデルは売り切りをベースにしていますし、複写機とは対立概念の域にあります。

世の中は、手書きから電子文書に移り変わり、モノクロの世界はフルカラーに変わりました。バリューの増大は情報量の増大と同じ動きをしました。しかし、バリューの増大がビジネスの拡大、つまり売上高の増長をもたらしたかというと必ずしもそうではありません。

カラーコピーが300円、白黒コピーが30円の時代に、米国では白黒コピーが10円相当で今に原価割れするだろう、と言われていました。当時、商品戦略とビジネス戦略はカラー化・プリンタ化を目指し、どの複写機メーカーもポストデジタルを基本戦略としました。

冒頭に書いた誤解は、このときも存在していました。つまり、メインテナンスフリーにすれば、さらに儲かるのではないか、コストセーブができるのではないか、という考えがありました。実際、30ppm以下の中小オフィス向け機械の場合、保守料金とサポートコストは見合わないと考えられていました。

米国がいわゆる複写機のレンタルビジネスモデルを捨てたのは、保守コストを適正化できなかったからだ、と言われています。日本の場合、お客様先まで往復1時間なのに、米国は4時間から8時間かかり、しかもすべてをカバーできないので、パーツをお客様先に置き、お客様にメインテナンスして貰えばいいではないか、という考えになったのだそうです。

重要なことは、複写機は紙送り機構や現像器を有する摩耗したら必ず保守が必要な機械であり、1枚コピーしたら○○円頂くのは、そのコストを回収するためであり、お客様に最良の状態で使って頂くことを旨としているからだ、という点です。

それで、冒頭の常務は「それだから私どもの会社はサービス業を会社設立当時からやっているわけです」とおっしゃるのです。米国ゼロックスが衰退した理由は、サービスを放棄したからだ、と言われます。企業存続には、バリューをどう創造していくかが重要です。しかし、お客様の役に立つことで対価を頂くというのでなければ、ビジネスの存続はむずかしいでしょう。ものを売っていくらの世界がガサツで長続きしない理由は、サービスという考えが根底にないからでしょうね。